【最新版】機械規則 主な変更点を解説
産業用機械類をEUに輸出する際に重要となる、産業用機械類が適用すべき法令「機械指令 ( MD, 2006/42/EC)」。この後継となる 「機械規則(MR, 2023/1230)」が2023年6月9日にEU官報に掲載されました。
これにともない、装置を輸出する場合でもいくつかの重要な変更点があります。本稿ではこの変更点について解説します。
Notified Body の型式認証の要否
機械指令のAnnex IV は、プレス機、射出成型機、木材加工機、食肉加工機などの特にリスクが大きい機械については、適合性評価を自社で実施する自己宣言では不足とし、EU Notified Body による型式認証を必須としていました。
機械規則でもAnnex I にほぼ同様の事項がありますが、以下の点で異なります。
- AIを搭載した協働ロボットなど、機械学習によって安全な動作についての制限をかけるものなどが追加された
- 多くの装置カテゴリがPart B に分類され、条件付きで自己宣言ができるようになった

サイバーセキュリティへの対応
Annex III 1.1.9 などでサイバーセキュリティへの対策が明記されました。 ネットワークに一切接続できない機械類でない限り、対応は必須といえます。
2024年時点では機械規則の整合規格が確定していないため、どの整合規格で評価するかは不明確ですが、ISA/IEC 62443 関連の規格は確実に該当すると見込まれます。
ポイントは下記3点です。
■サイバーセキュリティ対応のポイント

ISO 13849(安全回路の要求レベルと妥当性判断) の考え方がわかる方にとっては理解しやすいかもしれません。 ハッキング等によるリスクの程度に応じて要求セキュリティーレベルを決め、実際のセキュリティーレベルが妥当であるかを検証するといったプロセスです。
未知数な点も多いですが、装置の中心であるPLC周辺の構成に影響するため、早めの確認が重要といえます。
メーカー以外(流通業者、販売者)の責任が明確化
機械指令においては「CEマークが無い製品を流通させてはならない」といったことは規定されていました。
しかし誰に責任があるのかが不明確で、流通業者や販売者が「CEマークがないこと」に気付きながらも流通させてしまうといったことが度々起きていました。 そこで機械規則ではそれら流通販売に関わる全ての当事者に、以下のような責任があることを明確にしました。
■メーカー「以外」の責任が明確化された

例えばユーザーがコストダウンのためにCEマークがない製品でも良いと考えていた場合、メーカーとの間に入っている商社などがそのことを要求仕様書等でメーカーに伝えるだけで法令違反になります。
言い換えれば「ユーザー寄りの商社が法令違反を助長するといったことが起きないようなシステム」に変わったということです。
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