北米規格の歴史と概要
目次
アメリカの規格や認証機関は複数ある
アメリカは古くから様々な団体が規格作成や適合評価を行ってきた歴史があります。業界ごとに基準が違うことによる支障が徐々に増えてきたことで、1995年にNTTAA法(国家技術移転促進法)が施行されました。 この法律により、民間団体と民間規格を優先的に使用することになりました。
現在に至るまで様々な民間団体の規格をほぼそのまま採用していることから、規格を作る団体、認証機関、マーキング制度などが複数存在しています。
これが、北米規格が複雑である理由のひとつです。
■主な規格と認証機関の関係

欧州と北米はそもそも体系が違う
欧州はEC/EUとして加盟国内のルールを統一するなかで「仕様統一」が最重要でした。そのため、政府主導でニューアプローチ指令群を新たに策定しました。
それに対しアメリカは「コスト削減、イノベーションの強化」を主目的にし、民間団体や民間規格を採用しました。
どちらも一理あり一長一短ではありますが、「アメリカのルールは複雑である」という前提を確認しておくことが重要でしょう。
OSHA規則とは?
アメリカ連邦政府、労働省にあるOSHA(Occupational Safety and Health act : 労働安全衛生管理局) は「OSHA規則」というルールを規定しています。
その中の、29 CFR 1910.303 (a) において、「電気機器や電線は承認されている必要がある」と明記されています。
ここでいう「承認」とは一般的に、
- ①認証機関(NRTL)による「認証マーク」
- ②NRTLやField Evaluation Body による「Field Evaluation ラベル」
- ③AHJ (Authorities Having Jurisdiction : 自治体等の監査官)の「直接承認」
のいずれかです。
つまり、ULマークなどのマークやラベルがなければ、AHJの個別承認が必要ということになります。
詳細については、『米国での承認・認証の流れ』を参照ください 。
「適合性」をどう立証するか?
装置やコンポーネントは規格に適合させる必要がありますが、現地の監査官(AHJ)に適合性を証明するためにはいくつかのパターンがあります。

①認証(Certification)
製品が規格に完全に適合していることを証明するもので、米国ではOSHAが認めた認証機関(NRTL)でないと行えません。
通常はメーカーの工場が登録され、製品出荷時に認証マークを付けて出荷が可能です。
装置単位で認証マークをつけることができれば、原則追加の評価を受けることなくそのまま使用可能です。
ただし、機械類の場合は装置単位で認証できる規格(厳密には認証スキーム)が当てはまらないこともあるため、その場合は下記の Field Evaluation になります(米国における認証は、NECなどの規格では「Listed」と表現されます。ULのRecognizedは追加の使用条件があります) 。
②現場評価(Field Evaluation)
NFPA 79、NFPA791 などの規格に従って、最終ユーザーの現場に設置された状態で評価し、適合していることが確認できればField Evaluation ラベルが貼られます。
Field Evaluation ラベルを貼れるのは、NRTLのほかIASのサイトで確認できる認定された Field Evaluation Bodyとなります。
③追加評価なし(AHJのみが評価)
AHJが現場で確認することも、Field Evaluation と表現することがありますが、ここでは別のものとして記載します。
NRTLやFEBの評価がされていない装置を使用するためには、AHJが妥当性を判断し、最終的な使用許可を出します。 AHJは、コンポーネントの認証マーク等を確認しながら、装置全体が各種法規に適合しているかを確認します。なお現地の監査官は1名で各種法規に適合しているかを確認することなどから、時として思わぬ指示が出ることがあるようです。何度も対応を重ねるといわゆる勘所のようなものが掴めてきますが、初めての場合は経験を積んだ人・企業のサポートがあると安心でしょう。
下はAHJが「どの程度妥当性を認めるか」を、パターンごとに並べ替えたものです。
■上にいけばいくほど、効力が高い

認証ラベルやField Evaluationラベルがあれば、AHJの審査がスムーズになります。
コストもかかるためNRTL評価を省略する場合でも、NFPA79などの主要規格に適合することと、リスクアセスメントと安全対策を適切に実施することは丁寧に実施いただくことを推奨します。
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