サーキットプロテクタとは?正しい選定方法やサーキットブレーカーとの違いを解説

2023年12月1日

サーキットプロテクタは、過電流から回路を保護する機器です。似たような機器としてサーキットブレーカーや漏電遮断器などがあり、いずれも遮断器のため同じような機器に思えますが、それぞれ役割が異なります。

この記事では、制御盤内でもよく使用されている機器であるサーキットプロテクタについて、サーキットブレーカーとの違いも含めて正しい選定方法を解説します。

1. サーキットプロテクタとは

サーキットプロテクタは、過電流から回路を保護する機器です。何かの拍子で回路に過電流が発生すると、過電流による熱で回路が破損してしまいます。しかし、制御盤内にサーキットプロテクタを設置しておくと、過電流が発生した際にサーキットプロテクタがただちに動作し、瞬時に回路から電流を遮断してくれます。これにより、回路の破損だけでなく、火災や感電など重大な事故の発生を防いでくれます。

サーキットプロテクタに似た機器として、サーキットブレーカーがあります。どちらも電流の異常時に回路を遮断して守りますが、違いは動作時間や動作電流範囲にあります。サーキットプロテクタは定格電流が0.05Aから100Aの間で使用されており、精度よく異常を感知してくれます。一方、サーキットブレーカーは回路全体に対して使用するため、動作した場合に回路のどの機器に異常が発生しているのかはわかりません。

サーキットプロテクタは回路に設置された機器ごとに設置しますので、どの機器に異常が発生しているかがすぐにわかります。これにより、安全性が向上するだけでなく、回路の修理も容易におこなえます。

サーキットプロテクタにはバイメタルが使用されています。バイメタルは熱膨張率の異なる2種類の金属をくっつけた物で、スイッチとして使用できます。2種類の金属は普段はくっついているため、バイメタルを通して電流を流せますが、バイメタルの定格を超えた過電流が発生するとバイメタルが発熱し、膨張率の違いによって2種類の金属は離れます。2種類の金属が離れることはスイッチがオフになることを意味しており、電流は流れなくなります。つまり、過電流が流れるとバイメタルが過熱され、さらに回路が切断されると、回路を機械的にトリップさせることができます。

バイメタルは、この特性により機器中の温度制御によく用いられています。機器中のバイメタルの温度が上がりすぎるとバイメタルにより電流が遮断され、ヒーターなどの熱源が停止します。温度が下がるとバイメタルももとに戻り、回路に再び電流が供給されるようになります。

2. サーキットプロテクタの役割・特徴

サーキットプロテクタの役割は過電流から回路を保護することですが、他の回路保護機器に比べて動作が速く、その速さも瞬時・中速・低速など回路の特性に合わせて選択できます。

例えば、シーケンス回路やヒーター回路は事故時以外には大電流は流れず、負荷量が比較的大きいという特徴があります。このような回路では中速形のサーキットプロテクタが使用できますが、負荷の過負荷耐量が小さい電子回路はわずかな過電流が流れても回路が破損してしまう危険性があるため、このような回路には応答性のよい瞬時形が使用されます。

このため、サーキットプロテクタは電子機器など精密機器を過電流から保護するために使用されていることが多くなっています。

3. サーキットプロテクタとその他機器との違い

サーキットプロテクタは過電流が発生することで回路を遮断しますが、このサーキットプロテクタと似ている機器がいくつかあります。どこに違いがあるのか、サーキットプロテクタと比較しながら違いを解説します。

3.1. ノーヒューズブレーカーとの違い

サーキットプロテクタとよく似ている機器にノーヒューズブレーカーがあります。ノーヒューズブレーカーはその名のとおりヒューズが使用されていないブレーカーですが、サーキットプロテクタもノーヒューズブレーカーもどちらも過電流が発生すると回路を遮断します。この2つの機器の違いは動作時間にあります。

例えば、モーターなどの機器は始動時には電流を大量に消費するため、過電流が流れます。このとき、感度がよい遮断器を使うと、モーター始動時の過電流のために回路を遮断してしまいます。そのため、始動時に大電流が流れるモーターのような機器には過電流に対して感度がよいサーキットプロテクタは不向きであり、ノーヒューズプロテクタが使用されます。

しかし、過電流に敏感であり、かつ始動時に過電流が流れない回路の場合は、過電流の発生後できるだけ短時間で回路を遮断したほうが回路へのダメージが少なくて済みます。さらに、サーキットプロテクタのほうが細かい電流に対応しているため、過電流に敏感な電子回路の保護にはサーキットプロテクタが用いられます。

3.2. サーキットブレーカーとの違い

サーキットブレーカーは一般的な遮断器ですが、実はノーヒューズブレーカーもこのサーキットブレーカーの一種です。

サーキットブレーカーとサーキットプロテクタの用途は、ノーヒューズブレーカーの項目で解説したとおり、動作時間や電流の感度により決まります。

一般的にサーキットブレーカーは電源側に設置されており、回路全体に対して使用されることが多いですが、サーキットプロテクタは回路中の各電子回路などに対して使用されます。つまり、サーキットプロテクタは制御盤内でいくつも設置されている場合があり、どのサーキットプロテクタが動作したかにより故障個所が絞られます。そのため、サーキットプロテクタは複数個の使用を前提として小型でモジュール化されている商品が多く販売されています。

3.3. ヒューズとの違い

ヒューズは、ガラス管内の両端に金属端子を付けたうえでガラス管内に細い金属線を設置したものです。両端の金属端子間はこの細い金属線でつながっており、電気を流すことができます。このヒューズを回路中に設置するとヒューズを経由して電流が流れますが、定格以上の過電流が発生するとヒューズ内の金属線が発熱し焼き切れてしまいます。「ヒューズが切れた」とよく言いますが、その場合は実際にヒューズ内の金属線が熱で溶けて切れています。

ヒューズの欠点は、一度切れると二度と使用できなくなることです。ヒューズが切れたら新しいヒューズに取り替えなければなりませんが、電気に詳しくない人がヒューズを交換すると、感電事故を起こす可能性や、定格電流の異なるヒューズを取り付けてしまいさらなる事故につながる恐れもあります。

一方、サーキットプロテクタを使用すると一度動作しても交換の必要がなく、何度も使用できるので、ヒューズを使うよりも手間はかかりません。ただし、過電流の発生後も確実に遮断させておきたい場合には、サーキットプロテクタではなくヒューズを用いる場合もあります。

3.4. 漏電遮断器(ELB)との違い

漏電遮断器は、回路の漏電を検知して回路を遮断させる機能を持っています。漏電が起きているかどうかは、電源側の電流と回路側の電流をモニターすることにより確認できます。漏電が起きていなければ電源側と回路側の電流は等しいですが、漏電が起こり電流が回路の外に流れてしまっていると、回路側の電流は電源側の電流よりも小さくなります。この差を検知することで回路を遮断します。

一方、サーキットプロテクタは過電流を監視するのみで漏電は監視していません。

4. サーキットプロテクタの選定方法

サーキットプロテクタを選定する際は、保護したい回路に合った電流値と動作方法かを確認する必要があります。電流値が変動するモーターなどの機械の回路の保護にはサーキットブレーカーを使用し、過電流に弱い電子回路などの保護にはより細かく電流値が定められているサーキットプロテクタを用います。

電子回路の保護の場合は電気回路の特性を知る必要があるので、電子回路に設置するサーキットプロテクタは、自分で選ぶよりも、その電子回路を製造しているメーカーに問い合わせて確認することが、最適なサーキットプロテクタを選定するための確実な方法となります。

5. サーキットプロテクタの注意点

サーキットプロテクタは感度良く過電流を検知して瞬時に回路を遮断するうえ、回路を構成する機器ごとに設置し使用するため便利な機器ですが、使用にはいくつか注意点があります。

5.1. 電流の容量が低い

回路には電流が安定しているものとしていないものがあります。加熱や動作をともなう回路では電流は安定しておらず、瞬間的に大きな電流が流れることがあります。

サーキットプロテクタは許容する電流の容量が低く、少しの過電流でも検知し動作してしまうため、電流が常に変化するような回路で使用する場合はどのタイプを選択するかしっかり検討する必要があります。

5.2. 誤って電源をオンにすると機器を保護できない

ヒューズを使用すると、ヒューズが飛んだあとに再度電源をオンにしても、ヒューズから下流に電流が流れることはありません。このため、誤って再度電流を流しても機器は保護されます。

しかし、サーキットプロテクタの場合は動作後に再度オンにすれば再び電流が流れます。誤って電流を流すと機器が破損してしまう恐れがあります。

6. まとめ

サーキットプロテクタは過電流を検知し電流を遮断するので、サーキットブレーカーの役割を果たします。感度が良く、過電流を検知するとすぐに遮断できるので、電子回路を保護し安全性を高めるため、制御盤内でもよく使用されています。

サーキットプロテクタを使用する際は、ここでご紹介した機能や特徴をしっかり理解したうえで選定しましょう。

三笠精機では、効率的な制御盤設計・製造で信頼をいただいています。制御盤内のサーキットプロテクタ選定でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。