CSA規格(カナダ規格協会)とは?製品の安全性やULとの関連を解説
カナダ国内で使用されている「CSA規格」はカナダの法律で定められた安全規格です。そのため、カナダ国内でCSAにより指定されている製品を流通させる際は、CSAの認証取得が必須となります。
今回は、このCSA規格の歴史や対象となる製品、アメリカのUL規格との関連などについて解説します。目次
1. CSA規格(カナダ規格協会)とは
CSA規格とは、カナダ規格協会(Canadian Standards Association)によって定められた安全規格です。カナダ国内において電源に接続して動く機械や器具、電子機器、医療機器などを使用する際には、このCSA規格に適合していなければなりません。
(出典:カナダ規格協会 )
1.1. そもそも安全規格とは?
安全規格とは、製品が安全に使用できる基準をまとめたものです。この基準に沿った製品を作ることで、故障や事故が起こりにくく安全性の高い製品が作れます。また、その製品が規格に沿って作られているかどうかは第三者機関による試験で確認され、その試験に合格することで、規格を満たした証である認証が得られます。
現在、世界各国にさまざまな規格が存在していますが、そのうちISO規格のように世界各国で共通して使用されている規格は国際規格と呼ばれています。一方、EU加盟国間で適用されるEN規格など、国際規格よりも規模の小さい地域規格もあります。JIS規格など日本国内で使用される国家規格や、業界内で使用される団体規格、社内で使用される社内規格などもあります。
1.2. カナダの法律・法体系について
CSA規格はカナダの法体系の中に組み込まれており、法的拘束力を持つ規格です。カナダ憲法の下には連邦法がありますが、この連邦法を執行するための連邦規則の中にCSA規格があります。
カナダ連邦法の中のCLC(Canada Labour Code=カナダ労働法)には、賃金や労働時間など労働に関するさまざまな規則が定められており、職場の安全に関する内容もあります。その具体的な法律はCOHSR(Canada Occupational Health and Safety Regulations=カナダ労働安全衛生規則)と呼ばれます。
1.3. カナダでの電気製品販売に不可欠な安全規格
カナダ国内で電気製品を販売する場合には、CSA規格の認証を取得することが義務付けられています。認証を取得した製品にはCSAラベルの表示が許可されるとともに、規格番号にCANの接頭記号が付与され識別されます。
2. CSA規格(カナダ規格協会)の歴史と目的
カナダ国内で使用されているCSA規格がこれまで歩んできた歴史とその目的について解説します。
2.1. CSA規格の歴史
CSA(カナダ規格協会)は1919年に設立されたCESA(カナダ工学規格協会)に端を発し、1944年に現在の名称であるCSAとなりました。1984年には、ISOなどの規格の評価および登録のための外部組織であるQMI(品質管理協会)と、ガス関連の機器の試験や認証をおこなうISA(国際認可サービス)を設立しています。さらに2012年にはさまざまな関係機関が統合されてCSAグループが誕生し、CSAもその一部門となっています。
2.2. CSA規格の目的
CSA規格の目的は、高い安全性を持った製品を作ることで事故を未然に防ぎ、使用者の人体や財産を保護することです。また、安全性への貢献のみではなく、社会を良くし持続可能な社会を創ることを使命にしています。
3. UL規格(アメリカ保険業者安全試験所)との関連
CSA規格はカナダ国内における電気機器類の規格を定めています。アメリカでの同様の規格はUL(アメリカ保険業者安全試験所)規格と呼ばれ、機器や部品などの安全性や機能に関する規格を定めています。
CSA規格とUL規格は要求事項や試験・評価方法が似ているため、カナダとアメリカは国際相互承認協定(MRA)を結んでいます。自国の認定機関が相手の規格の評価を実施する相互認証を可能としており、両者の認定業務が同等であることを認めています。これにより、カナダ国内の評価機関でUL規格の認証試験および評価を受けること、またアメリカ国内の評価機関においてCSAの試験および評価を受けることが可能となっています。
つまり、CSA規格の認証を取得するとUL規格と同等とみなされるため信頼性が高く、アメリカ国内では有利になります。
以下の記事ではUL規格について詳しく解説しています。
>関連記事:UL規格とは?取得する必要性や認証方法について解説
4. CSA規格(カナダ規格協会)の対象製品の分野
CSA規格は以下のとおり対象ごとに9つの分野に分かれています。それぞれの分野での代表的な製品をご紹介します。
- 1. 家庭用機器 家庭用機器には、冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機、冷暖房や空調、換気に関する機器などが含まれるカテゴリです。
- 2. 建設および建物関連製品 建物関連には、ケーブルや配管、窓、ドアなどの製品が含まれます。工場で組み立てられるプレハブなども対象となっているカテゴリです。
- 3. 発電と蓄電 インバーターやバッテリー、燃料電池システムなどが含まれるカテゴリです。
- 4. 産業および危険区域の機器 このカテゴリは幅広く、モーターやタービン、発電機、産業で使用される機械類、制御盤などが含まれるカテゴリです。
- 5. 通信および情報 市販の電子機器や通信ネットワーク、バックアップシステム、ワークステーションおよびサーバーなどが含まれるカテゴリです。
- 6. 光 蛍光灯の明るさなど光に関するテストをおこなうカテゴリです。
- 7. 医療および研究機器 医療現場や研究機関で使用する機器に関するカテゴリです。
- 8. 保護具 保護具や保護メガネ、安全靴など、人体を保護する器具に関するカテゴリです。
- 9. 工具および屋外器具 電動工具や屋外で使用する器具などに関するカテゴリです。
制御盤は産業機器ですので、④の産業および危険区域の機器に該当します。
6. CSA規格(カナダ規格協会)がおこなうサービス
CSAがおこなうサービスには、テストと認証、マークとラベリング、付加価値付与の4種類があります。
テストは、製品をテストし、その安全性や品質・性能を、定められた手順に従って評価します。このテストを通してCSA規格に適合するかどうかが判断されます。
テストに合格すると認証が取得できます。この認証を得るとCSA規格の基準を満たして製造された製品であることが示され、顧客の信頼が高まります。
この認証を取得すると、CSAマークを製品に貼り付けること(ラベリング)が許可されます。このマークがあれば、認証を取得しているかが目視でわかるようになります。
テストからCSAマークのラベリングまでが認証取得の工程ですが、この他に付加価値を付与するサービスもあります。ポータルサイト上で製品リストを公表することなどが挙げられます。
7. CSA規格の認証分類について
CSA規格は製品に応じて9つの分野に分かれているとご紹介いたしましたが、認証に対しても製品によっていくつかの分類があります。
CSA規格で実施している認証分類は下記のとおりです。
● ラベル /Label(家庭で使用する電気製品)
● リ・イグザミネーション/Re-examination(上記以外の電気製品)
● コンポーネント/Component Acceptance
● リ・イグザミネーション/Re-examination(SMC製品)
7. CSAの電気安全関係の規格について
CSA規格はさまざまなパートから構成されていますが、電気の安全に関するパートはC22となります。C22はさらに2つのパートに分かれており、それぞれC22.1、C22.2と簡易的に表示されます。
C22.1は正式にはCanadian Electrical Code PartⅠと呼ばれており、電気を使用する機器類の設置時の安全対策を指しています。C22.2の正式名はCanadian Electrical Code PartⅡで、一般的な電気を使用する製品および配線関連の製品が対象となっています。
これらのパートのなかにはさらに細かい規定があり、ほぼすべての電化製品に適用できるようになっています。
8. CSAマークの種類について
カナダのCSAとアメリカのULは国際相互承認協定を結んでおり、それぞれの国内認証機関でそれぞれの規格の認証をおこなうことが可能となっています。ただし、アメリカの認証機関でCSA認証を取得した場合にはマークが異なるなどの違いがあります。
8.1. CSAマーク
カナダ国内の認証機関にてCSA認定を取得した場合、CSAマークの使用が認められるようになります。このマークは製品に適切に表示する必要があります。
8.2. cULマーク
アメリカ国内の認証機関でCSA規格の認証を受けた場合には、CSAマークとは少々異なるマークを使用することになります。cULマークと呼ばれるもので、このマークが表示されている製品は、カナダではCSA規格が表示されている製品と同等に扱われます。三笠精機では、cUL対応の制御盤の設計、製作に対応できますので、cUL対応についてお困りの際は、ぜひ三笠精機にご相談ください。
8.3. CSAulマーク(CSA NRTLマーク)
アメリカ国内の認証機関でULとCSAの両方の認証を取得した場合にはCSAulマークが表示されます。カナダではCSAの認証を得ている製品として扱われ、アメリカではULの認証を得ている製品として扱われるので、このマークがあるとカナダとアメリカ両国内で製品を流通させやすくなります。
8.4. サステナビリティマーク
サステナビリティマークは、持続可能な社会を創る取り組みの一環として導入されたマークです。持続可能な社会づくりに貢献できると認められた製品に対して表示が認められており、その製品が寿命を終えるまでの間、環境への影響が最小限に抑えられることを表しています。
9. まとめ
CSA規格は、カナダへ製品を輸出する際に取得が必須の規格です。アメリカのULと相互認証が可能なため、ULを取得していればCSAの認証も取得しやすく、CSAを取得していればULの認証も取得しやすくなります。
三笠精機では制御盤のUL認証取得サポートをおこなっていますが、CSAの認証取得のためのサポートもおこなっています。CSA認証取得をお考えの際にはぜひ三笠精機へご連絡ください。
海外規格 大辞典
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