制御盤 海外規格 UL規格対応

溶剤再資源化のパイオニアが挑む
「北米規格への適合」

岐阜県 日本リファイン株式会社
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今回紹介するのは、有機溶剤再資源化のパイオニアが挑んだ北米規格適合のストーリー。初めての試みながら、事前の準備が奏功し厳しい基準もクリアできたプロジェクトだ。溶剤のアップサイクルという、製造現場・社会が抱える課題の解決にもつながるプロダクトの製造と規格適合について話を伺った。

「リサイクル」ではなく「リファイン」

日本リファイン株式会社は、岐阜県輪之内町に本拠地を置く企業。蒸留による使用済み溶剤の分離精製をコア技術に据えた、有機溶剤再資源化分野のパイオニアとして知られている。同社はリサイクルという言葉すら目新しかった1960年代に、今で言う「アップサイクル」の考え方をもとに事業を立ち上げた。技術開発センター長 取締役 技術本部長の小田昭昌氏は「1966年の創業時から、『使用済みの有機溶剤を回収リサイクルし、新品と同等以上の品質で市場に循環させること』を目指していました」と話す。

特に近年は、輸送時に発生するCO2やコスト削減を目的に、ユーザーが自社の工場内でリサイクルできるオンサイトの仕組みづくりにも注力している。「精製リサイクルと環境機器の企画・設計・製造という2つの事業を自社内に有する強みを活かし」(小田氏)、再資源化された溶剤のライフサイクル全体を担える同社は、創業当初から現在までこの分野では欠かせない存在であり続けている。

同社が得意とするのは、特定不純物を極限まで低減・管理した高機能溶剤の提供だ。半導体関連部材・医薬品などファインケミカル分野では、一般的なグレードの有機溶剤では対応できない規格項目が増加している。

技術開発センター環境エンジニアリング部計装電気課課長の長久保 信氏は「ただ再生するだけの技術ならそれほど難易度は高くはないです。しかし一般的なグレードの溶剤には、検査機器では計測できない量ではあるものの、様々な不純物が入っています」と話す。同社は、その不純物の分析手法そのものから自社で作り上げてきた。不純物を徹底的に取り除いた高機能溶剤は、様々な製造現場で大活躍している。

岐阜県に2工場、千葉県、北九州に計4拠点を持つ。工場では溶剤のリサイクルに加え、環境機器の設計・製造も行っている(画像は千葉工場)。

「気体を液化し濃縮」で輸送コストと環境負荷を減らす

今回のプロジェクトで出荷した装置も高グレードの溶剤を精製するもの。扱うのはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)ガス回収濃縮装置だ。

NMPはリチウムイオン電池の製造工程で大量に用いられる。この物質は使用後にガスとして排出されるが、このガスを回収し液化。その後同社工場かユーザーの工場(オンサイト)でNMPを精製し、再び材料として使用する仕組みとなっている。

特にリチウムイオン電池は、微量の不純物が様々な不具合を引き起こす。そのため同社では「電池グレード」と呼ばれるレベルにまで精製したNMPを提供。今や同社のNMPは、リチウムイオン電池の製造現場で必要不可欠な存在なのだ。

プロジェクトのゴールは、北米にある製造ラインにこの装置を設置すること。もちろんUL規格適合が必要なのだが、同社は数年前から着々と準備を進めていた。顧客からの相談を機に、知識を得る場や知見を持つ企業を探すなか、三笠精機のセミナーに参加することになる。「その時は、ようやく見つけた!と思ったのを覚えています」と長久保氏は当時を振り返る。

「装置を製造していれば、いずれは『北米規格の壁』にぶちあたるとは思っていました。案件の増加も予想されていましたので、自社でも対応できるよう何か準備はしたいと思っていました」(長久保氏)。

早めの情報収集・準備が奏功する

今回のプロジェクトについて、三笠精機の技術営業部部長 海外規格スペシャリストUL508A-MTR 第二種電気工事士 セーフティーアセッサの橋本佳紀は「日本リファイン社はだいぶ前から準備をしっかりと行っていたのが印象的でした」と振り返る。比較的余裕を持てたため、無理なく細かな点まで丁寧に詰めることができたという。

制御盤の北米規格の適合は増加傾向にあるが、現状は「初めて対応するケース」がまだ多い。しかも、規格の適合に必要な工数は、「国内向けの制御盤製造」と比べると大きな差が生じる。その工数の差のつかみにくさも、対応の難しさにつながると橋本は指摘する。

長久保氏も「プロジェクト全体でも納期の変更等が生じていたので、当初から『これは少々余裕がなくなるぞ』と予想していました。ただ、最初は右も左もわからずといった状況でした」と話す。そこで長久保氏は、三笠精機への相談に加え、情報を少しでも早く手にできるよう受注元との細かなコミュニケーションを図ったという。

制作時の様子。この制御盤が揮発性有機ガス回収濃縮装置に実装された。

「誰も経験していない分野の仕事をするのは、本当に大変だと思います」と小田氏も当時の長久保氏について振り返る。一方長久保氏に聞くと 「最終的に自分の学びにもつながったので、実は大変さをあまり感じませんでした」とのコメント。

「とはいえ規格について詳しい関係者は、受注元も含め周りにいない状況でした。三笠精機からは例えば仕様書を噛み砕き実務に即して細かな点まで説明がありました。ともにプロジェクトを進められたのは心強かったです」(長久保氏)。

「カーボンニュートラル実現に向け貢献したい」

「何よりも、プロジェクトの最中、親身になって下さった三笠精機の皆さんには感謝しかないです」と長久保氏は話す。「三笠精機と関わったことがきっかけで新たな気付きもありました」(長久保氏)。

小田氏も「他社との協業がアイデアの素になるというか、お互いが『創造性の柱』になるとも感じました。長期的に別の新しいプロジェクトで何かできればと考えています」と話す。

今回のプロジェクトで設置された有機ガス回収濃縮装置は、様々な社会課題を解決する可能性を秘めている。現在NMPをはじめ、溶剤の大部分は再資源化される前提だが、同社は新たに石油から精製される量を低減し、代替できる資源を探っているという。

背景にあるのは、CO2削減の流れだ。石油など地下資源由来の材料は、ライフサイクルのなかで最終的には必ずCO2が発生する。小田氏は「地下資源ではなく、すべてを『地上資源』とし、リサイクルすることでカーボンニュートラル社会の実現に寄与したい」と語る。

自社製品のライフサイクル全体でのCO2排出量削減や環境負荷低減が企業評価の一つの軸となるなか、同社の持つ技術と今まで培った再資源化の仕組みづくりのノウハウは、ますます欠かせないものとなるだろう。一方で、現在化学工学分野の担い手は大きく減少しつつある。

「特に今の若い世代は社会課題解決に関心が高いと聞きます。当社には、溶剤の再資源化に関する技術・ノウハウが集積されていると自負しています。是非、興味のある方に加わって欲しいです」(小田氏)。

最後に小田氏は「当社は『2050年のカーボンニュートラル実現』への貢献を掲げていますが、まだまだ私たちにできることは多いと確信しています」と締めくくった。

(左)技術開発センター長 取締役 技術本部長小田昭昌氏。(右)同環境エンジニアリング部計装電機課。CO2削減だけでなく、地球環境にまつわる様々な社会課題の解決に直接的に寄与する同社の事業。一方で「溶剤は最終製品には入っていないものなので、生産者しかその存在は知らない」(小田氏)。長久保氏も「私も入社してからこの仕事のやりがいや意義を実感しましたね」としつつ「社会の課題解決に確実に寄与できるので、若い人にももっと知って欲しいですね」と話す。

■日本リファイン株式会社

〔輪之内本社〕〒503-0212 岐阜県安八郡輪之内町中郷新田2574-1

〔東京本社〕〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-2-1 岸本ビル11F

〔技術開発センター〕〒290-0067 千葉県市原市八幡海岸通2388-22

溶剤のリサイクル事業、環境機器のエンジニアリング事業

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