制御盤 海外規格 UL規格対応

「なければ造る」エンジニアスピリット
一括大量納品とUL規格にどう対応するか?

大阪府 五洋商事株式会社
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今回取材したのは、大阪に拠点を持つエンジニアリング商社。プラスチック成形分野のFAプランニングパートナーとして多くの顧客を支援してきた。同社の最大の強みは、「なければ造る」のエンジニアスピリット。今回のプロジェクトで扱った装置は、国内では納品実績があるもの。ただし、これまでのプロジェクトとの違いが、“数”そして“UL規格への適合”だ。この二つのハードルをどう乗り越えたのか。話を聞いた。

「一品一様」で、お客様のニーズに答える

五洋商事株式会社は、1980年に専門商社として産声をあげた。社名にもあるように“5名”の人物が集まり事業を開始。日精樹脂工業など大手メーカーとの取引を続けながら規模を拡大してきた。今ではモノづくりも担う同社だが「社名から商社部門だけを有する企業と認知されることもあり、特に昔は商談の場で『で、製造はどこで?』 と聞かれることもありました」と取締役(システム技術担当)部長の新谷耕作氏は話す。

このモノづくり部門が立ち上がったのは、ちょうど創業10年目のタイミング。プラスチック成型分野で専門商社として実績を積み上げるなか、社内で得意分野を持ちたいとの機運が高まったためだ。当時も今もこの業界は多くの企業がしのぎを削っており「価格競争にはならない、他社にはない強みをつくりあげよう」と、幾人かの技術者に声がかかった。

新谷氏もこのタイミングで五洋商事に参画することになる。「別のメーカーで働いていたのですが、『他社にはない強みをつくりあげよう』という思いに共感し入社した次第です」(新谷氏)。当時について新谷氏は「『大手と真っ向勝負をしても、決して大きいとは言えない所帯では勝つことはできない』、それが社内の認識でした」と振り返る。

大阪市鶴見区に拠点を置くシステム技術室を始めとしたエンジニアリング部門は、今や同社を支える大きな存在にまで成長したが、“五洋商事”からの名称変更は?と尋ねると、それは違うという。

「システム技術室ができたのは、当時、市場にはない、お客様のニーズに合致するモノを望む声が多かったためです。汎用的なモノは商社のネットワークを活かしお届けすれば良い。商社とエンジニアリング企業の両輪があってこそ、今の五洋商事があるのです」(新谷氏)。

大阪市鶴見区にある同社のシステム技術室(画像は入口のウェルカムボード)。現在19名の社員が在籍しているが、約半数が20代~30代の若手だ。

こうした経緯もあり“お客様のご要望にお応えし、それを上回る付加価値をどう提供するか”が、長年同社を支えるスピリットの一つとなっている。新谷氏も「今でも私自身、仕事を請けるのを前提にまずは実現方法から考えます」と話す。

「特にこのシステム技術室には、難題に挑むことを苦痛とも思わない人が昔も今も集まっています」(新谷氏)。

規模が拡大してもこの“エンジニアスピリット”は健在だ。例えばお客様との打ち合わせには必ず技術スタッフが同席。現場に足を運ぶことも多いという。今や誰もが知る人気の衰えない商品のコア部分なども手がける同社だが、「技術部門が責任を持ってサポートする。その姿勢を続けてきたことが信頼につながり、今のお客様との良い関係を生み出した」と新谷氏は話す。

ベトナムの新拠点が力を発揮

そんな同社が今回取り組んだプロジェクトは、どのようなものだったのだろうか。実は装置自体は、国内向けに実績もあるもの。違いは台数が多いこと、そして、UL規格への適合だった。

「製品そのものについての心配はなかった」と話すのは、システム技術室係長の米田光宏氏。「まず課題として考えたのは、納品数にどう対応するかでした」と当時を振り返る。

これについては、早々に見通しがたった。ちょうど社内で進めていた、ベトナムでの新規拠点立ち上げ計画が動き始めていたからだ。海外拠点の設立は、同社が次のステージに向かうために進めていたもの。部品を国内で調達しそれをベトナムへ供給、組立加工も現地で行うことで生産規模の拡大とコストダウンを図るのが目的だ。

「国内の生産拠点だけでは、計画された台数を予定された期間に製造するのは難しかったのですが、ベトナムの新規生産拠点を活用することで解決の目途がたったのです」(新谷氏)。

あまり知られていない「規格適合」への壁とは?

もう一つの課題である、初めてのUL規格適合にはどう対応したのだろうか。ここにはちょっとした紆余曲折があった。規格適合に向けサポート先を探し目星をつけた企業と話を進めてきたが、小さなミスマッチが積み重なっていく。

大手から中小まで、UL規格適合に向けたコンサルティングを担う制御盤事業者は数多くある。しかし、それぞれに強みがありカルチャーがあり得手不得手がある。新谷氏は「今はその違いがわかりますが、当時は目指すゴールは規格適合で、企業ごとに大きな差はないと思っていました」と振り返る。

期日が近づくなか次の一手を探す同社だが、その際役に立ったのが“難題に挑むカルチャー”だ。「あらゆるつてを使い多くの方に相談をしながら、何とかならないものか?と思案し探し続けた」(米田氏)結果、ある企業関係者から紹介されたのが三笠精機だった。

当時について「とにかく不明点や疑問点があったら質問しまくりました。その情報はノート何冊分にもなりました」と米田氏は話す。やり取りのなかで印象に残ったのは「安心感と信頼感」(米田氏)という。

「どんな質問を投げかけても、三笠精機からの回答はクリアでした。やり取りを重ねるなか、よい協業先と出会ったとの実感は高まりました」(米田氏)。

米田氏は「当時はUL規格の本当の難しさに気づいてなかったのかもしれません」と付け加えたが、これは多くの企業から聞くエピソードでもある。

UL規格に限らず規格はその地域の法令に基づいている。法律に明記された危険性を回避し、安全性を担保するための手段として存在するのが規格なのだ。

「UL規格適合で言えば、盤内の配線、盤の周りの部品とどう接続するかも変わってくる。ただ、法律で定める安全性を担保するためと考えれば、それは自然なことです」(橋本)。

「利益率の向上」も「難題解決」も喜び

総納入台数が多いこともあり、プロジェクトは取材時の2024年11月時点で進行中だったが、「規格適合に関しては、ひと山越えましたね」と米田氏は話す。

今回のプロジェクトでは、前述のベトナム現地法人を活用したモノづくりのモデルケースも構築できた。ベトナムでは現地企業や日系企業との新たな協業も進んでいるという。

「今でも掲げる“ご要望プラスαの実現”に磨きをかけるべく、コストを抑えつつより高付加価値のものを造り続けられる企業のあり方を目指していきたい」(新谷氏)。

自社開発の高精度画像検査装置『AKIRA』。一般的に判別が難しいとされるざらつきのある梨地でも、傷を明瞭に浮かび上がらせることが可能な卓上型画像検査装置だ。ちなみに『AKIRA』は、設計者の名前に由来する。

とは言え技術者スピリットは健在で「一人のエンジニアとしては、今でも難題解決にやりがいを感じますね」と米田氏と顔を合わせて笑う。

新谷氏は「もちろんお叱りもダイレクトに届きますが、お褒めの言葉も直接頂ける。それがこの仕事の醍醐味ですね」と話しインタビューを締めくくった。

左は取締役(システム技術担当)部長の新谷耕作氏。システム技術室を統括する。右はシステム技術室係長の米田光宏氏。 人材の新陳代謝についてはどのメーカーも頭を悩ませるが、若手定着の秘訣を新谷氏に聞くと「当時の上長から言われた『いつでも笑っていると情報も自然と集まってくる』との心がけを意識しているくらい」とのこと。米田氏も「技術屋というとピリッとした空気がありそうですが、うちはそういうことはない。お客様からも『いい笑顔ですね』とお褒めの言葉を頂戴する」と話す。

■五洋商事株式会社

〔本社〕〒550-0002 大阪府大阪市西区江戸堀1丁目10-8 パシフィックマークス肥後橋6F
〔システム技術室〕〒538-0051 大阪府大阪市鶴見区諸口6-3-36

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