制御盤 海外規格 UL規格対応

「より多くの人に機械を使ってもらいたい」
創業90年 老舗メーカーの挑戦

埼玉県 伊達機械株式会社
  • #コンサルティング

「お客様からの依頼でどうしても北米の安全規格に対応しなければならない」――。UL508AやNFPA79などのUL規格適合を目指すきっかけで、最も良く見られる理由の一つだろう。しかし、自社装置をUL規格に適合できれば、新たな顧客とのビジネスが拡大する起爆剤となりうる。今回紹介するのは、長年UL規格適合を手掛ける機会をうかがっていた企業。プロジェクトはどう進みどのような結果をもたらしたのか、話を聞いた。

高い技術と蓄積された知見が強みとなる

1935年創業で、約90年の歴史を持つ伊達機械株式会社。創業時から、レベラーフィーダなどプレス用周辺機器の自動化・省力化全般を得意としてきた老舗メーカーだ。同社のさいたま市の拠点には、本社管理機部門から営業、設計、加工、組立とモノづくりに欠かせないすべての機能が集約されている。加えて内製比率も高く、顧客の困りごとにも迅速に対応できるのが特長だ。

この体制はトラブル時にも力を発揮する。原因の特定と対策が実施しやすいからだ。全社員が同じ情報を持ちながら一丸となって課題に対処するのは同社のカルチャーでもある。社長室・営業管掌の伊達 奨氏は「長い歩みのなかで様々な苦労や経験を経て、そこからノウハウを共有し積み上げてきたのが、当社の力になっています」と話す。

もちろんその背景には、高い技術力がある。いくつもの特許を有するだけでなく、“困りごと解決の引き出し”が多いベテランスタッフも多数揃っている。積み重ねられた歴史と経験は同社の生み出す価値の源泉だ。「ありがたいことに、お客様の現場で30年以上使われている機械もあります。それらのマシンの修理・メンテナンスにも、今でも自信を持って対応できるんです」(伊達氏)。

独立系メーカーで、幅広い顧客のニーズにも柔軟に対応できる同社。そこで製造される機械は、“かゆいところに手が届き”一度使うと手放せないとの評価を得ている。「提案すればするほどご理解いただける」(伊達氏)、特に玄人にとって欠かせない存在なのだ。

過去にUL規格への対応も考えていたが…

顧客の困りごとに応える形で、常に新たな課題に向き合い続けてきた同社だが、現在も新たな販路開拓に積極的に取り組んでいる。今回のUL規格対応は、この販路開拓につながる一歩にもなった。

ちなみにこのUL規格適合プロジェクトの最終ゴールは北米に新設される工場への装置設置で、様々なメーカーが参画している。このうち伊達機械に打診があった分野は、引受先の決定が難航していた。納期も含め厳しさが予想されたこともあり、同社でも「当初は厳しいのでお断わりしよう、との声が多かった」(伊達氏)という。

しかし、社内で何度も検討を重ねた結果、プロジェクトへの参画を決断する。決め手の一つとなったのが「サポート役として紹介された三笠精機の存在でした」と伊達氏は振り返る。

社長室・営業管掌の伊達 奨氏。金融業界出身で「入社した当初は本当に何もわからず、会議で話される言葉が外国語のように聞こえたくらいです」と振り返る。「今では、非常に高い技術力を持つ企業と実感しているので、より多くの方に当社の機械を使って頂きたいですね」(伊達氏)

実は同社では、過去に何度かUL規格対応が必須となる案件受注の機会があった。しかし社内にノウハウもなく、また協業先も見つからず実現に至らなかったのだ。

「例えば見積りを取ったとしてもそれが適正な価格であるのかも判断できない。それくらい、何もわからなかったのです。一方で、初歩的なところから相談できる協業先も見つけられない状況でした」(伊達氏)。

規格適合は「よく知る場所を、あえて知らない道で歩かされるようなもの」

長年UL規格に関する分野での協業先を探すなか、たまたま三笠精機とつながったことで、同社の取り組みが動き出す。伊達氏は「ようやく信頼できる相談先を見つけられたと実感したのを覚えています」と話す。

新たな課題とも言えるこのプロジェクトに取り組むなか、どのような苦労があったのだろうか。電気技術課 課長の市村氏は「完全な別モノとまではいかないものの、例えば部品を盤のなかにどう配置するかの違いがあったり、そもそも部品自体が初めて見るものだったケースもありました。学びは多かったものの、つくりあげていくのは大変でした」と振り返る。

特に困難を極めたのは、規格の理由を現場スタッフに腹落ちさせることだったという。「勝手知ったる盤の設計で、ルートもわかっている。それなのに、あえて遠回りにも思える初めての道を示され『ここから進みなさい』と強制されているようなものでした」(市村氏)。

そもそも規格はそれ単独で存在するものではない。その先には適用される国や地域の法令があり、それを製品に落とし込んだものが規格なのだ。「国外の未知の地域の法律など、背景にあるものをすべてカバーするなんて、ひとつの企業でなかなかできるものではないです」と市村氏は話す。

規格への適合は、時間と費用を無限にかけることができれば、ある意味では実現できる。しかし、現実には納期と費用の縛りは必ず存在する。規格適合の実務の肝は、現状にあわせ、いかに最適解を求められる時間軸の中で見つけ出すかにかかっているとも言える。

「規格を知っているだけでなく、納期やリソースなどの状況に応じ最適な手法を繰り出せるかどうかも、UL規格適合では欠かせない視点です」と三笠精機の技術営業部部長 海外規格スペシャリストUL508A-MTR 第二種電気工事士 セーフティーアセッサの橋本佳紀も指摘する。

日本語でも解釈が難しい数百ページの規格を読み込み、それを現場の業務に即してアウトプットする。言い換えれば、正解を知っているだけでなく、多様な条件下でも正解が出せる手数の多さが必須なのだ。

「当社はよくお客様から『最短距離で物事を進める』と評されます」(橋本)。例えば、設計をいちから見直すことで、ボトルネックとなる箇所を回避するなどの手段も講じるなど、大胆な施策を行うこともある。

伊達氏は当時について「とにかくスムーズに物ごとが進んでいったのが印象的でした」と振り返る。「知識水準への信頼感もさることながら、何を聞いても淀みなく回答があるので安心感がありました」(伊達氏)。

「海外規格に対応できると、知ってもらう機会が増える」

「今回のプロジェクトは勉強になりましたし、引き受けて良かったと思います」と市村氏は話す。社内にまたひとつ経験が蓄積されたことで、次にUL規格適合案件があっても「あの時できたから、今度もできるだろうと思える」(市村氏)という。

他業界出身の伊達氏は自社と自社を取り巻く業界について「メーカーは『請けたもののできませんでした』となる事態は許されない気風がある」と評する。一方で「その結果、どうしても保守的にならざるを得ない。ですから、一度経験すれば変わるのではと、機会をうかがっていたところもあります」と話す。

「私はセールスサイドの人間ですから、基本的にお客様のご要望には全て対応したいとの思いがあります。これからは、お断りすることもなくなると本当に思うとやってよかったです」(伊達氏)。

海外規格への適合と機械そのものの品質は、必ずしもイコールではない。一方で規格に適合していないだけで、特定の地域において最初の選択肢にもエントリーできなくなる。規格は参入障壁にもなっており、伊達氏は「その壁は簡単には超えられないように思います」と指摘する。

このUL規格適合プロジェクトを通してひとつの障壁がなくなった。「過去の実績からしても、当社の機械を使ったお客様には、必ず喜んでもらえる自信があります。少しでも広く当社の機械を使ってもらえるチャンスが増えるのは嬉しいですね」(伊達氏)。

「一社でもお客様に多く使って頂き、徐々市場からに認知されてきたのが当社の歴史。全国に拠点があるわけでもないので、当社をご存知ないお客様も多いのが実情です。当面の目標は、国内外を問わず、まだ当社を認知していないお客様に知ってもらうことですね」(伊達氏)。

老舗メーカーで確固たる技術があっても、海外規格は壁となってしまう。このプロジェクトは、それを打破する一歩となったのかもしれない。「今後も三笠精機だけでなく多くの方々のサポートを受けつつ、新しいチャレンジをしていきたいと思います」と伊達氏は締めくくった。

埼玉県さいたま市岩槻区に拠点には、本社管理機部門から営業、設計、加工、組立とモノづくりに欠かせないすべての機能が集約されている。

■伊達機械株式会社

〒339-0002 埼玉県さいたま市岩槻区裏慈恩寺367-1

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